なぜなくならない? 妊娠スクープ メディアが「妊娠アウティング」する理由
本人の同意なく第三者に妊娠を暴露する「妊娠アウティング」。
週刊誌などのメディアによる芸能人の「妊娠スクープ」もその一つと言えるだろう。
ネット検索で「妊娠報道」と打ち込むと、検索ワード候補として「いらない」と表示されることもあるが、なぜなくならないのだろうか。
識者に見解を聞いてみた。
本人が妊娠報告していないにもかかわらず、週刊誌などが妊娠を暴露する事例は、以前ほど過激な報道は目立たなくなってきたものの、近年でも芸能界を引退した女性の妊娠を報じたり、男性タレントの一般人の妻の妊娠を明かしたりして、批判を浴びたことがあった。
「メディアとジェンダー」に詳しい共立女子大教授の橋本嘉代さんは「1980年代には妊娠を否定する女性芸能人に(妊娠検査のため)『お小水をください』と声をかけるような芸能リポーターもいた。世間も『下世話』と思いつつも、『ほっておけ』と見て見ぬふりをする風潮だった。たしなめる方法がなかった」と話す。
過激な「妊娠スクープ」が減ったことについては、SNSの発達により、世間の声が届きやすくなったことを挙げ、「下世話なジャーナリズムに対する批判が表面化しやすくなったことで、浄化作用が働いている」と説明する。
それでも本人からの報告も含め「妊娠報道」はネットにあふれている。
橋本さんは「妊娠などのプライベートな情報への社会的関心はむしろ高まっている」と指摘。
その理由について「昔の大女優は子育てなどの自身のプライベートを語らないものだった。ところが、今はプライベートを自ら話すことで、好感度を高めたり、ネットニュースに取り上げられたりしている。一部の芸能人がセルフプロデュースとしてプライベートを発信しており、世の中の関心も高まっている」と明かす。
「少子化」が社会問題として大きく取り上げられていることも要因にあると言う。
Xやヤフーニュースのコメント欄に「妊娠報道はいらない」との書き込みも目立つが、「関心がない人ももちろんいるが、一定数とても関心を持っている人がいる。
そして『妊娠報道はいらない』と批判する人も含めて、ネットニュースのPV(アクセス数)を稼いでおり、ニュースバリューがあると判断されている」とする。
妊娠報道に関心を持つ人については「少子化で、この国はどうなってしまうのかと考える保守層のほか、子育て層が仲間意識として関心を持っているのでは」と分析する。
メディアによる妊娠アウティングについて「命が宿っている当事者の心身に負担や苦痛を与えかねないし、本人が仕事関係者に順序立てて自分で妊娠報告をしたいと考えているときに勝手に報道されると、信頼関係を損ねることもあり得る。公益性がない私生活の暴露は自粛すべき」と行き過ぎた報道がもたらす弊害を懸念する。
その上で「週刊誌などがセンセーショナリズムに走ることは報道や取材の自由、知る権利として保障されているので歯止めをかけづらい。しかし、芸能人といえども、妊娠・出産などの生殖にかかわることを本人の同意なく公開することはプライバシーの侵害にあたる」と警鐘を鳴らす。
参照元∶Yahoo!ニュース