経験・知識なしの女性が釣具屋の店主に 祖父の店受け継ぎゼロからの挑戦

釣り具の写真

秋田・潟上市の女性が3年前、家業の釣具店を継いだ。釣りの経験も知識もない中で祖父の思いを受け継ぎ、新たな釣具屋像を思い描く女性の挑戦を取材した。

「おじいちゃんかっこいい!」で釣具店主に一つ一つ細部にわたり、趣向を凝らした疑似餌の数々。

魚釣りに欠かせない道具の1つ「毛針」。

この毛針を作っているのが、潟上市にある「中居釣具店」三代目店主の山田希望さんだ。

山田さんは秋田市の飲食店に勤めていたが、4年前、コロナ禍で仕事がなくなった時、釣具店の初代店主である祖父の中居由太郎さんが残した1冊の本と出会い、運命が変わった。

「コロナ禍に、そういえば実家の釣具店どうするんだろうなと、ふと思い出した。二代目店主の母が『客も少なくなってきたので店を閉めよう』と言っていたので、片付けと閉店セールをしていたが、その最中に初代店主の祖父が釣具店をこういう流れで今までやってきたと書いている本を見つけて『おじいちゃんかっこいい!』と思って、やれるところまでやってみようと始めた」と当時を振り返る。

2021年に三代目店主を継いだ山田さんだが、当初は家族や友人らから「えぇ継ぐの?」「釣具屋もうからないよ」などと心配する声も多かった。

しかし、「祖父が残してきたものが残せるなら残したいなという気持ちが湧いてきた」との思いで、釣りの経験も知識もない中、ゼロから挑戦を始めた山田さん。

二代目店主だった母から毛針作りを教わる中で活路を見出したのは、普段から活用しているSNSだった。

中居釣具店三代目店主・山田希望さん:釣りもしない魚も触れない、虫も触れない、何の知識もなかったので、SNSの投稿に“#キャバ嬢が継いでみた”のハッシュタグをつくって、「釣具屋継ぎました。継いだけど何にも分からないので教えてください」といろんな発信をして、みなさんに釣りや釣具のことを教えてもらった。

SNSで情報発信すると全国から反響があり、山田さんの釣りに関する知識も深まっていった。

他にも「毛針ちゃん」のニックネームでライブ配信に挑戦するなど、店のPRを精力的に行っている。

SNSを通じて「こういう店が秋田にあるんだ」とお店に感心を持つ人や、海外で配信を見てくれた人が「ハワイでこういう感じの釣具を使っているのを見たことがある」という情報を提供してくれるなど、うれしい反応もあるという。

「面白そうじゃん」をモットーにさらに2023年3月、山田さんは自身の飲食店での経験を生かして、釣り談義に花を咲かせたり、毛針を愛でたりしながら、お酒が楽しめる釣具屋、その名も「中居釣具店 川反店」を始めた。

自分の愛用している釣具を眺めながら、触りながら酒を飲む人が結構いると聞いたのがきっかけだそう。

中居釣具店三代目店主・山田希望さん:「何この店?」と、最初店を知らない人から言われた。

「お酒飲めるの?」という感じで入って来る人も結構いる。

「面白いね!新しいね!」と来てくれる人も多い。

山田さんは他にも、オンラインイベントを開催したり、店のオリジナルグッズを売り出したりと、常に新しいことに挑戦している。

「”釣り×○○”みたいな感じで『いいね、面白そうじゃん』っていうのをいろいろやっていけたらいいなと思う。自分も今まで周りの人に助けられてきたので、どこでどんな縁があるか分からない。楽しみながら輪が広がっていくような感じにできたらいいなと思う」と新たな釣具屋像を思い描く山田さんの挑戦はまだまだ続く。

山田さんは店舗を改装する予定で、店内の一角に祖父から受け継いだ昔の釣具などを展示するミュージアムをつくりたいと話している。

参照元∶Yahoo!ニュース