核のゴミ「文献調査」熟慮の受諾 佐賀県玄海町長「議論の呼び水に」「お金目的ではない」
原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物(核のゴミ)の最終処分場選定に向けた「文献調査」を巡り、10日に佐賀県玄海町の脇山伸太郎町長が明らかにした結論は、町議会の意向に沿った「受諾」だった。
これまでは受け入れに否定的な見解を繰り返してきた脇山町長。
「町議会で請願が採択されたことは大変重い」。熟慮した上の決断だったことをにじませた。
「文献調査が処分地に直結するものではない。住民の皆さんはご心配があると思うが、なし崩し的に最終処分場になることはない」。
午前11時半過ぎ、町議会全員協議会後に記者会見に臨んだ脇山町長は、受け入れに至った理由を淡々と説明する中でこう強調した。
原発立地自治体としては初めての表明。
これまでの町の取り組みを振り返り、「全国で議論が高まり、日本のどこかに最終処分場の適地が見つかる呼び水となれば」と述べた。
町の財政状況も説明した上で「お金目的で受け入れるわけではない」とも語った。
脇山町長の判断が注目された全員協議会は、報道陣や町民らの傍聴を禁止する異例の対応が取られた。
通常は議長判断で非公開にしているが、今回は町民の関心事であるため、前日の早い段階では公開の準備が進められていた。
しかし、その後、「混乱しないようにしたい」などの理由で非公開に転じたという。
このため、議会棟入り口の自動ドアが閉鎖され、議会棟につながる役場内の階段前には立ち入りを制限するポールとバーが設置された。
近くには職員が配置され、事情を知らずに訪れた人への対応に追われた。
全員協議会は午前10時に始まり、10分ほどで終了。
だが、脇山町長の記者会見が始まる午前11時半まで内容は明かされなかった。
玄海町議会は4月、賛成6、反対3で文献調査の受け入れを求める請願を採択し、強い推進の意志を示していた。
賛成派の議員の多くは「処分場選定の議論が進まないことに一石を投じたい」と口をそろえる。
国は2002年から、最終処分場の候補先を募ってきた。
ただ、応募はわずかで、現在、文献調査に入っているのは北海道の2自治体のみだ。
請願の採択に賛成したある議員は、国が示すマップで町域の多くが「処分場に好ましくない特性があると推定される地域」に分類されていることや、文献調査以降の調査には知事の同意が必要になるなど、最終的な処分場建設には高いハードルがあることは十分に理解しているという。
それでも、文献調査に手を挙げることが重要と考え、採択したことで「役割は果たした」と強調する。
地域の分類についても「ほかの同様の地域が手を挙げやすくなる」と前向きに捉える。
また、「国から交付される20億円は返上したらいい」とも話し、今回の採択が交付金が目当てではないことを強調している。
文献調査の受け入れに反対する住民らは抗議の声を上げた。
議会棟前には、文献調査受け入れに反対する団体のメンバーら10人ほどが集まり、「社会的合意形成未熟」などと書かれたのぼり旗を掲げた。
正面玄関は締め切られ、議員らは裏側の出入り口から入った。
佐賀市在住で、「玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会」代表の石丸初美さん(72)は「民意を無視したやり方に憤りを感じる。(文献調査の次の)概要調査には進まないよう声を上げ続ける」と語った。
最終処分場にふさわしい特性を有しているのかどうかを示すため、国が2017年に公表した「科学的特性マップ」では、好ましくないのか、好ましいのかについて、全国を四つの色で塗り分けている。
資源エネルギー庁によると、玄海町の大半は「好ましくない特性があると推定される」地域で、石炭や石油などの鉱物資源の埋蔵地で将来の掘削の可能性がある地域(シルバー)に分類されている。
請願を審議した玄海町議会原子力対策特別委員会でも、このマップをどう捉えるべきかが議論になった。
同庁は、マップは全国規模のデータに基づいた分類のため、「特性を確定的に示すものではなく、地域の詳細な様子は明らかになっていない」と説明。
鉱物資源の埋蔵状況について、詳細な調査内容をまとめた地域の資料などを調べる文献調査の実施は可能だとしている。
参照元∶Yahoo!ニュース