パックご飯の輸出が拡大 健康志向、日本食ブーム、円安の恩恵も

レトルトご飯の写真

パックご飯の輸出が伸びている。

健康志向や日本食ブームによる海外でのコメ需要の高まりに加えて、調理の手軽さや円安による割安感も背景にあるようだ。

国内ではコメの需要低下に歯止めがかからず、メーカーは海外市場に生き残りをかけている。

秋田県内のコメ生産者らが2020年に設立したジャパン・パックライス秋田(同県大潟村)は、村内の工場で年間3600万食のパックご飯を製造し、そのうち1万2000食を台湾へ輸出している。

今年4月には、隣接する男鹿市に第2工場を新設すると発表した。

来年6月に本格稼働後、両工場で年間計9100万食を製造する計画だ。

同社の涌井徹会長は「コメ需要の大きい米国や台湾を中心に、約1500万食の輸出を目指したい」と意気込む。

シンガポールやオランダでも試験販売をしているという。

生活用品大手のアイリスオーヤマ(仙台市青葉区)も22年、台湾への輸出を開始。

今年1月には、米国とタイにも輸出先を広げると発表し、26年に12億円の輸出額を見込んでいる。

また加工食品を手がけるテーブルマーク(東京都中央区)は23年、輸出事業を強化するため、営業本部の傘下に海外事業部を置いた。

パックご飯は日系以外の現地スーパーでも取り扱いが増えており、「特に売り上げの伸びを期待できる商品」(広報)とみる。

農林水産省によると、パックご飯の輸出額は17年の3億4000万円から、23年には約3倍の10億円に成長した。

米国や香港、台湾、韓国、ベトナム、シンガポールが主な輸出先だ。

業界団体の全日本コメ・コメ関連食品輸出促進協議会(全米輸)によると、和食が「ヘルシー」だという認識の広がりや、日本で和食を楽しんだ外国人旅行者の増加により、海外でコメ人気が上昇。

欧米のようにコメを主食としない国では家庭に炊飯器がなかったり、水質の違いでおいしく炊けなかったりするが、パックご飯なら電子レンジで失敗なく調理できる。

そこへ円安による価格競争力の向上も追い風となり、輸出が急増しているという。

一方、輸出を強化したいメーカー側の事情もある。

国内では近年、輸入小麦の価格上昇や新型コロナウイルス禍による外食機会の減少で、割安・手軽なパックご飯の需要が高まっていたものの、最近は各社の増産態勢が整い「価格競争になっている」(全米輸)。

国内のコメ需要は人口減少などで長期的な縮小が見込まれており、メーカーは「海外に目を向けざるを得ない環境になってきている」(同)というのだ。

国内の農業を活性化したい政府は、パックご飯の輸出を後押しする。

20年に開催した関係閣僚会議で、パックご飯やコメ、米粉、米粉製品の輸出額を、19年の52億円から25年に125億円に伸ばす目標を決めた。

特にパックご飯は「輸出額が右肩上がりで、重要な品目」(農水省)。

23年度補正予算では、パックご飯を含む食品について、輸出先の規制に対応する製造設備などの導入にかかった費用の半額を支援する事業に55億円を計上した。

ただ、輸出のさらなる拡大には課題がある。

アジアや米国への輸出では、韓国や台湾の安価なパックご飯と競合する。

その米国にもコメの一大産地カリフォルニア州があり、自国製のパックご飯も安価に流通しているほか、日本からの輸出には14%の関税がかかる。

円安による恩恵も永続的なものとは言えない中、テーブルマークは「日本製の高い安全性や品質を(利点として)提案していく」。

ジャパン・パックライス秋田も「貿易商社を通さず輸出することで、物流コストを抑える」として対策に乗り出した。

なによりも「日本米の白飯はずば抜けておいしいという点が差別化に役立つ」(全米輸)というのがメーカーの思いだ。

全米輸の細田浩之専務理事は「韓国や台湾以外の国や、アジア系以外の人々では、パックご飯の認知度はまだ低い。コメを何と合わせて食べるのか伝えたり、おかずとセットになった商品を開発したりする工夫が重要だ」と指摘する。

参照元∶Yahoo!ニュース