公取委、Googleに初の行政処分 LINEヤフーの取引不正に制限か

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公正取引委員会は22日、米グーグルに対して独占禁止法の「確約手続き」を適用し、行政処分を科したと発表した。

公取委による同社への行政処分は初めて。

デジタル広告配信事業を巡り競合するLINEヤフーの取引を一部制限した疑いがあり、再発防止を徹底させた。

米巨大IT企業の不正に厳格な姿勢を示す一方、自主的な改善による競争の是正が見込めるとして排除措置命令や課徴金納付命令は免除した。

確約手続きは、当局と事業者との合意によって迅速かつ協調的に問題を解決する行政処分。

違法性が疑われる行為について公取委から通知を受けたグーグルは今月、ヤフーへの技術提供を今後3年間制限しない▽履行状況を公取委に定期報告する――ことなどを「確約」する自主改善計画を提出した。

公取委は再発防止の実効性を伴うと認定し、確約手続きが完了した。

処分の前提は、グーグルが2014年、検索と広告分野の業務提携契約を一部変更するようヤフーに要求し、モバイル端末向けの「検索連動型広告」配信技術の提供を制限した行為。

検索連動型広告は検索サイトでユーザーが書き込んだ検索ワードに連動して関連広告を表示する仕組みで、ヤフーはグーグルの技術を使って配信事業を展開。

技術提供を制限されたことで取引先を失うなど、約7年間にわたり困難な状況になったという。

この分野は2社の寡占市場だが、ヤフーはグーグルの検索エンジンを使っており、技術的にはグーグルがほぼ独占していた。

技術提供を制限してからは、モバイル端末向けの国内シェアはグーグルのほぼ独占状態になったという。

公取委は独禁法が禁じる私的独占や取引妨害の疑いがあるとみて、22年に調査を開始。

グーグルは同年中に契約変更を撤回していた。

グーグルとヤフーが業務提携契約を交わしたのは10年。

当時、検索と広告分野でグーグルの独占を懸念する声が上がり、2社は公取委に「サービスの運営を完全に分け、競争は続ける」などと説明。

公取委は「競争が確保され、独占禁止法上の問題はない」との見解を公表した。

だが、グーグルは契約変更で当初の説明を覆した。

こうした経緯も行政処分を検討するうえで考慮された。

欧米の検索連動型広告市場はグーグルの「1強」とされる。

一方、国内はヤフーのような競争相手がおり、事件としても「世界的に珍しい構図」(公取委関係者)。

このため、米巨大IT企業の独禁法違反を取り締まる際に度々生じるビジネスモデル論争などに陥らず、確約手続きを適用できたとみられる。

グーグルへの行政処分について公取委幹部は「米巨大IT企業が相手でも迅速に対処し、厳格な姿勢を示すことができたのは意義がある」としている。

確約手続きは、独占禁止法上の行政処分の一つ。

公正取引委員会から同法違反の疑いを指摘された事業者が自主改善を申し出て、公取委が計画の実効性を認定する。

問題の解決と再発防止を「確約」することで事業者は同法違反と認定されず、排除措置命令や課徴金納付命令を免れる。

競争環境の迅速な是正や協調的な問題解決につながる制度とされ、11カ国が参加した環太平洋パートナーシップ協定(TPP11)の発効に伴い2018年に導入された。

談合やカルテル、刑事告発に相当するような行為は適用外。

参照元∶Yahoo!ニュース