「助けられる命」をもう失いたくない 「病院の機能停止」で4歳の娘を亡くした母親が震災報道に思うこと
地震や津波による直接的な被害からは免れたものの、過酷な避難生活や医療資源の不足などで失われる命がある。
2016年4月の熊本地震で、宮崎さくらさんは次女・花梨ちゃん(当時4歳)を亡くした。
入院先だった熊本市民病院の機能停止などが原因の「災害関連死」だった。
こうした被害は、どうすればなくせるのか。
宮崎さくらさんに『最期の声 ドキュメント災害関連死』の著者・山川徹さんが聞いた。
能登半島地震から3カ月が過ぎましたが、支援や復旧の遅れが報じられています。能登半島地震をどうごらんになっていますか?
災害関連死の遺族としては、能登半島の災害関連死が、どうしても気になってしまいます。
災害のあとに、避難生活で持病が悪化したり、体調を崩したりして亡くなってしまうことが災害関連死です。
能登半島地震発災直後、高齢の男性が命を落としたとニュースで知りました。
その男性は、避難所の床で寝ていて朝起きたときにはすでに息がなかったそうです。
熊本地震でも避難所への段ボールベッドの供給の遅れが問題になりました。
段ボールベッドは、過酷な避難所生活のなかで、災害関連死を防ぐ有効な取り組みの1つと言われています。
もしも避難所に段ボールベッドがあったなら、その男性は亡くならずにすんだのではないかと思わずにはいられませんでした。
被災した能登半島の映像を見るたび、どうしても8年前の後悔が蘇ってしまいます。
ふだんの暮らしのなかでは思い出さない記憶が呼び起こされてしまうんです。
体育館の床には漂うウイルスやホコリは、感染症や肺炎の原因になります。
段ボールベッドは、ウイルスやホコリから被災者を守るだけではなく、保温効果もある。
2018年の北海道胆振東部地震では段ボールベッドが迅速に届いたことが、災害関連死者が少なかった要因と考えられています。
災害関連死の教訓が、支援や避難所運営に活かされずに、8年前と同じような苦労や悲しみを味わっている人たちがいるのではないか、と考えてしまいます。
熊本地震では地震の揺れが直接の原因で亡くなった方は50人に対して、災害関連死は220人を超えました。
4歳で亡くなった私の娘もその1人です。
遺族の立場としては、花梨の、娘の死を教訓として、災害支援や災害医療に活かしてほしい。
それが、あの子が生きた意味だったと思いたいんです。
それはほかの遺族の方も同じなのではないでしょうか。
参照元:Yahoo!ニュース