能登半島地震で農業被害も深刻 離農につながりかねない事情

地震の影響を受けた土地の写真

能登半島地震で甚大な被害が出た石川県北部の被災地で、田んぼが地割れするなど農業被害が深刻だ。

「このままでは、離農する人が増える」地元では、そんな危機感が広がっている。

石川県珠洲(すず)市最大の農業法人「すえひろ」に勤める政田将昭さん(49)は、「田んぼのあらゆるものがダメになった。これからどうしたらよいのか」とため息交じりに話す。

すえひろは、市内で田畑約140ヘクタール(甲子園球場36個分に相当)を耕作し、社長を含め11人のスタッフを抱える。

主力の米は約115ヘクタールで栽培し、コシヒカリや地元ブランドの「能登ひかり」などを作ってきた。

だが、地震の影響で、田んぼの間を走る農道は幅30センチほどの割れ目がざっくり口を開けている。

育苗施設や農業機械も損傷した。

政田さんは、今春からの耕作のため予定していた資材の発注をあきらめた。

被害は、それだけではなかった。

用水路のコンクリートが崩れたり配管が土砂で埋まったりして、水を流せない所が多い。

田んぼの下にある農業用水の送水管も壊れた。

政田さんは「仮に水を流せたとしても、田んぼにうまく水がたまるか分からない」と不安を口にする。

仲間とともに約3週間かけて田畑を回り被害状況を確認した。

すると、そのままでは1ヘクタールしか耕作できないような状況だった。

このため、県などに応急対策を依頼し、近くの川から水をポンプで引き上げられるようになった。

「これで、50~70ヘクタールの田んぼに作付けができる見通しが立ってきた」

4月9日、例年より約2週間遅れで育苗箱に種をまく作業に入った。

ただ、地域の農業が維持されるのか、先行きは不透明だ。

というのも、用水路は地域の共有財産だからだ。

今後、どのように本格的に復旧させ、維持管理していくのか、地域で決めなければならない。

避難先から戻っていない農家も多く、高齢者の割合も高い。

政田さんは「離農する人が出てくるかもしれない」と不安を口にする。

輪島市内で管理する25ヘクタールの田んぼのあちこちで、液状化現象が起きたという竹内毅(つよし)さん(41)も危機感を募らせる。

「『用水路を今年中に修復するなら、また農業をやりたい』という人はいる。

農業コミュニティーを維持できるように復旧を急ぎたいが、生活再建もままならない人が多い中、あまり大きな声で農業の復旧を急げとは言えない」

2020年の県の統計によると、個人で営んでいる65歳以上の農家の割合は、地震の被害が大きかった奥能登地域で5割に上った。

 こうした状況から、政田さんは「今後、担い手不足が一層進む恐れがある」と懸念する。

「行政は、今後も見据えた復興プランを考えてほしい」 

参照元:Yahoo!ニュース