「高過ぎる」、体育館の有料化に波紋 利用者「無料だったのに」「サークル解散するしか…」 市「質の高い体育館を維持するため」
長野市が2025年度中に有料化を検討している社会体育館について「市が素案とする使用料金が高過ぎる」との声が利用者から出ている。
市側は「将来にわたり質の高い体育館を維持するため」(スポーツ課)と理解を求める。
日頃利用する10団体の20~80代の利用者約70人に取材したところ、「有料化は仕方がない」との意見の一方、「サークル活動に影響が出る」との切実な声も。市は幅広い利用者の声に耳を傾け、適正な負担の水準を探る必要がある。
公共施設とその維持管理費の削減が叫ばれる中、市はスポーツを軸にした街づくりを進めるため、社会体育館を残していく方針を掲げている。
22年に社会体育館利用団体を対象にしたアンケートでは、8割が「体育館を改修して使い続ける」方向性を支持。
使用料導入を容認する意見が7割を占めたこともあり、有料化を検討してきた。
有料化案は、支払い方法としてオンライン決済が浸透し、デジタル技術の向上で無人での料金徴収の可能性が出てきたことから具体化した。
市は3月のスポーツ推進審議会で、社会体育館維持などに関わる費用の5割を利用者が負担する案を提示した。
08年に定めた市の「行政サービスの利用者の負担に関する基準」に基づき、避難所などの「公益性」と、スポーツでは利用者が限定されるといった「私益性」を持ち合わせていることを考慮した。
市が示した案は体育館1面分の使用料。
2時間当たり2700~3500円を標準とする。
徴収した使用料について、市スポーツ課は通常の維持管理に加え、備品の更新や空調設備の導入、トイレの洋式化などに充てる方針。
部活動の地域移行を見据えた子どもの活動場所の確保や、熱中症対策、避難所機能の向上も狙いで「未来への投資になっていく」とする。
だが、大幅な負担増への反響は大きい。
体育館を利用する卓球やフットサルなど複数の競技者に料金について尋ねると、「非常に高い」「この金額であれば今後の利用は控える」との意見が目立った。
「年金生活者には厳しい」「気軽に地域交流をする場がなくなる」「料金を段階的に上げるなどの配慮はないのか」との声もあった。
40年以上続くバドミントンサークルで毎週活動する小宮山隆子さん(70)は、「少人数のサークルなので1人当たりの負担が大きくなる。クラブの存続が苦しくなり、歴史あるサークルだけれど解散せざるを得ない」と受け止めた。
地域の仲間とバレーボールを楽しむ原山佐代子さん(53)は、「今まで無料だったのにこの金額で利用するのは高過ぎる。市民の健康増進が後退してしまう」と懸念する。
避難所としての利用に理解を示しつつも「空調設備を導入しないで、料金をもう少し下げてもらいたい」と訴える。
一方、テニスサークルに所属する鶴見真慧さん(27)は、市営のテニスコートを有料で利用しているため「(体育館も)応分の負担は仕方がないと思う」。
料金については「構成人数で負担額が左右されてしまうので、平準化するために1人当たりの個別の料金でもいいのではないか」と投げかける。
市スポーツ課は、子ども料金の設定や利用面積に応じた料金設定など、詳細は今後検討し、利用者らの声を聞いて10月に有料化の内容を決定する方針だ。
長年愛されてきたスポーツ交流の場である社会体育館の在り方は、市も市民も、多様な側面から、共に考えていく必要がある。
参照元:Yahoo!ニュース