「テムズ川に入らないで」 汚染深刻化で異例の呼び掛け
英国で河川の汚染が深刻化している。
1989年に民営化された水道各社が経営難に見舞われる中、大雨などの際に未処理の下水を直接排出するケースが増えているためだ。
首都ロンドンを流れるテムズ川も例外ではなく、濁った水に市民は胸を痛めている。
30日にテムズ川で開催される毎年恒例の大学対抗ボートレース。
オックスフォード大とケンブリッジ大の名門校同士の対決は春の訪れを告げる風物詩となっている。
勝利したチームの選手らが川に入って水を掛け合い、コックス(舵手)を水中に投げ込むのが習わしだが、主催者は今年、健康上のリスクがあるため控えてほしいと異例の呼び掛けを行った。
水質検査を手掛けた環境保護団体リバー・アクションによると、テムズ川の大腸菌の数値は、国が海水浴場の基準として定める4段階のうち、最下位の「不良」と比べて最大10倍に上ったという。
同団体のウォレス最高経営責任者は「水道会社のテムズ・ウオーターが何十年も事態を放置した結果だ」と指摘し、下水の排出規制の強化が必要だと訴える。
大雨などによる下水の氾濫を防ぐため、水道各社は未処理水を川や海に排出することが認められてきた。
環境庁が27日公表した統計によれば、2023年にイングランドで報告された下水排出件数は46万4056件と、22年の30万1091件から54%増え、16年のモニタリング開始以降で最多となった。
排出時間も計約361万時間と、前年比で2倍以上に達した。
下水の排出急増について、水道各社は天候などを理由に挙げるが、株主に巨額の配当を支払う一方、インフラへの投資を怠ってきたとの批判は強い。
調査会社ユーガブが23年6月に実施した世論調査では、水道事業の再国有化を望む人の割合は69%に達した。
設備投資には水道料金の引き上げが不可欠と訴える業界に国民が向ける視線は冷たい。
参照元∶Yahoo!ニュース