ボルティモアの橋崩落で米貨物輸送混乱へ、西海岸にシフト加速も
米メリーランド州で大型連絡橋が崩落した事故を受け、ボルティモア港や主要幹線道路が閉鎖され、中部大西洋岸地域では数週間から数カ月にわたり輸送の混乱が生じる見通しだ。
ボストンからマイアミに至る大西洋岸地域の貿易玄関口で起こり得るボトルネックを避けようと、輸出入業者による西海岸への貨物のシフトが加速しそうだ。
サンフランシスコを拠点とするデジタル貨物プラットフォーム、フレックスポートの創業者、ライアン・ピーターセン最高経営責任者(CEO)は「企業はすでに東海岸から西海岸への貨物のシフトを始めている。ボルティモアがオフラインになると、東海岸にある他の全ての港に貨物バブルがもたらされ、混雑と遅延が生じることになる」と指摘した。
それは新型コロナウイルス禍のサプライチェーン関連の大きな教訓の一つが繰り返される事態に企業や消費者が直面する可能性も意味している。
ある港を経由する貨物の量が突然10%、20%増加するだけで、「大規模な未処理業務や混雑が生じ、船が沖合で待機し、それらが重なりあらゆる種類の遅延を引き起こす」とピーターセン氏は述べた。
地元や州、連邦政府の当局者らは救助活動に集中し、自動車の取り扱いで全米最大の港がいつまで閉鎖されるか明らかにしない状況で、物流の専門家やエコノミストらは影響の評価を開始した。
コンセンサスとして浮上しているのは、 しばらくの間は物流の足かせになるだろうが、局地的なもので、企業が適応できる限り、堅調な米経済を妨げることはないとの見方だ。
S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスによれば、ボルティモア港は1月31日までの1年間の取扱量が東海岸とメキシコ湾岸の輸入量の約3%を占めたに過ぎない。
だが、メルセデス・ベンツ・グループやフォルクスワーゲン(VW)、BMWといった欧州の自動車メーカーが港とその周辺に施設を構えているため、乗用車とライトトラックには極めて重要な港だ。
同港は米国2位の石炭輸出港でもあり、インド向け輸出に打撃が及ぶことも考えられる。
フォード・モーターとゼネラル・モーターズ(GM)は、代替ルートの確保に取り組んでいる。
フォードのジョン・ローラー最高財務責任者(CFO)は26日、ブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「大きな港で流通量が多いため、影響が出るだろう。
当社は回避策を準備する。
東海岸の他の港や国内の他の場所に部品を迂回(うかい)させなければならないだろう」とコメントした。
DATフレイト・アンド・アナリティクス社の首席業界アナリスト、ディーン・クローク氏によると、ボルティモアはコンバインやトラクター、掘削機などの農機・建機の全米有数の玄関口だ。中西部での作付けシーズンを控えた3月は、ボルティモアの農機輸入のピーク月だという。
サプライチェーンのリスク評価会社であるエバーストリーム・アナリティクス社によれば、ボルティモア港は鉄鋼やアルミニウム、砂糖などの重要なハブ港でもあり、毎週約30-40隻のコンテナ船が寄港している。
米石炭商社エックスコールエナジー&リソーシズによると、最大250万トンの石炭輸送が妨げられる恐れがある。
IHSマークイットとウッド・マッケンジー傘下のジェンスケープの情報では、ボルティモア港内に約12隻の大型船とほぼ同数のタグボートが立ち往生しており、貨物船や自動車運搬船、「パランカ・リオ」というタンカーが船舶リストに含まれる。
崩落した橋は「フランシス・スコット・キー橋」で、1日当たり約3万5000人が利用。
米国トラック協会によれば、この橋を通過する商品の価値は年間約280億ドル(約4兆2400億円)だと伝えている。
参照元∶Yahoo!ニュース